IoT普及率5%の日本、今年中に普及率100%を狙うカナダから何を見る?
産業用IoT開発に積極的なカナダ
カナダ企業は、コスト削減と生産性の向上のために、私が予想していたよりも早くIoT技術を実装しているようだ。つい最近だと、ロボットが外科手術をするなどという<産官学連携の産業用ロボ研究>が話題になっていたと思う。
さて、先日のIDC(International Data Corporation:IT専門調査会社)の報告書「IoT:IoTによるデジタル経済への影響を受け入れる準備はできているか」について、カナダのIT系メディアBetaKitが記事で触れている。
今回の調査では、カナダのIoTへの取り組みが以前の予測よりもずっと速いスピードでおこなわれているということがわかった。中堅・大企業の45%は、少なくとも1つのIoTシステムを業務に組み込んでいるとのことだ。IoTに対して積極的なアメリカ企業における普及率51%と比べてみても、そのスピードの速さがわかるかと思う。日本は比べるまでもないだろう。
おなじくIDCの調査によると、残る55%の企業もIoTに対しての投資を今年中にはおこなう予定だという。
「あらゆるモノがつながる世界は、産業がコンシューマや企業、その環境とのつながりを探り続けるほどに、より刺激的かつ複雑になる」と、IDCカナダ研究ディレクター ナイジェル・ウォリス氏は言った。
またウォリス氏は、カナダのIoT機器の出荷数が増えていることからこの普及率の上昇がすぐには減速しないとみている。
IoTデバイス出荷数も急増中
また、カナダにおけるIoTデバイスの出荷台数は、昨年だけで2000万と急速に増えている。
企業は、業務コストを削減するためにIoTソリューションを実装したと述べた。彼らは同時にそのソリューションが効率と業務の生産性を高めるものだと理解しただろう。
そして今年の6月、カナダのGM(General Motors:ゼネラルモーターズ)は、新しくオンタリオ州にできた自動車ソフトウェア開発センターのために300から1,000名のエンジニアを雇用し、自動運転車の研究開発を拡大すると発表した。おなじく6月、BlackBerry発祥の地であるオンタリオ州南西部の都市 ウォータールーにて、はじめてLPWAN(低消費電力広域)ネットワークの本格的な展開を開始している。
これから“どうしたいのか”が鍵となる
株式会社ミック経済研究所が6月におこなった調査「従業員規模別・業種別IoT活用動向調査300社」によると、日本のIoTの企業普及率は2015年度4.0%、2016年度は5.0%となり、従業員100人以上の企業2,184社で活用されているという結果となった。
今後、カナダはIoT革命を推し進める技術のうねりの上を飛び跳ねるようにその取り組みを拡大していくだろう。一方、先進国にしては対応の遅さがよく取り上げられる日本はどうだろう。あいまいな概念でしかなかったIoTは実装されるようになり、遅れている事実はこうして数字で目の前に突きつけられるようになった。それをふまえて、今後の対応の変化はあるのだろうか。
そして、我々は“どうしたい”のだろうか。
IoTは特殊な人たちだけに関わる技術ではない。概念的な話になるが、やはり<未来>は<現在>からしか見えないものであり、<どうなるのか>は我々が<どうしたいのか>で決まっていくのだろう。ネット環境のいい日本だ。考えて、意見を交わして、試して、また考えるという地道なサイクルを、こうした記事を通じて実行していきたいものである。
ReadWrite[日本版] 編集部
[原文4]
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