開発ドキュメント体系と業務フロー

2005年6月10日(金)
梅田 弘之(うめだ ひろゆき)

常駐・派遣型ビジネスから脱却するには


   ソフトウェア業界の仕事は、下請け・孫請けのピラミッド構成となることが多く、常駐・派遣型のビジネスがかなりのパーセンテージを占めています。そんな中、他の業界と同じように、下請け脱却を目指して"一括請負"で仕事を引き受けたいとする会社もあります。

   その志は善しとしましょう。しかし、肝心の"実力"が伴っていないと発注者も受託者もお互いに手痛い目に遭います。ここで言う"実力"とは、単なる技術力のことではありません。スケジュール管理や品質管理、コスト管理などのプロジェクト管理の技術・体制を社内で持っているかどうかが成否の鍵となるのです。

   筆者の会社は創立11年目なのですが、創業以来「常駐・派遣の仕事はやらない!」という起業時のポリシーを貫いて来ました。C/SやWebのシステム開発を主体としているのですが、10年間の中では当然(?)、いくつかの失敗プロジェクトもありました。その苦い経験の中で「成功率と生産性の向上」を永遠の経営課題と定めて取り組んできたのです。

   前回の連載「即活用!企業システムにおけるプロジェクト管理」では、この成功率向上という課題解決のために体系化したプロジェクト管理手法「PYRAMID(ピラミッド)」について紹介しました。

   今回は、もうひとつの課題「生産性の向上」に対する取り組みのひとつである業務システムの開発ドキュメント標準「DUNGEON(ダンジョン)」について紹介していきます。

   これは、システム開発における「ドキュメントの標準化」を目的とするものです。担当者ごとに異なる"自己流"のドキュメントではなく、各人のノウハウを結集したベストのドキュメントフォームを策定しました。「PYRAMID」と同じく、「DUNGEON」も組織全体で管理し、各プロジェクトでこれを活用しながらバージョンアップを行っています。

   PYRAMIDもDUNGEONも、"実践的"なものを目指しており、即活用できるようなテンプレートを用意しています。PYRAMIDではプロジェクト管理、DUNGEONでは開発資料に関するドキュメントを定めています。図1は、プロジェクトサイクルにおけるPYRAMIDとDUNGEONのドキュメント範囲を表したものです。


図1:プロジェクト管理手法「PYRAMID」と開発ドキュメント標準「DUNGEON」
(画像をクリックするとExcelファイルをダウンロードできます。/44.0KB)

   今回の連載ではDUNGEONのドキュメントを説明しながら、テンプレートなどを順次ダウンロードできるようにしています。試用してみたい方は、自社の開発スタイルに合わせて手直しして使ってみてください。これらの資料を活用していただいて、日本のIT業界が常駐・派遣スタイルから脱却するのに少しでもお役に立てれば幸いです。

著者
梅田 弘之(うめだ ひろゆき)
株式会社システムインテグレータ

東芝、SCSKを経て1995年に株式会社システムインテグレータを設立し、現在、代表取締役社長。2006年東証マザーズ、2014年東証第一部、2019年東証スタンダード上場。

前職で日本最初のERP「ProActive」を作った後に独立し、日本初のECパッケージ「SI Web Shopping」や開発支援ツール「SI Object Browser」を開発。日本初のWebベースのERP「GRANDIT」をコンソーシアム方式で開発し、統合型プロジェクト管理システム「SI Object Browser PM」など、独創的なアイデアの製品を次々とリリース。

主な著書に「Oracle8入門」シリーズや「SQL Server7.0徹底入門」、「実践SQL」などのRDBMS系、「グラス片手にデータベース設計入門」シリーズや「パッケージから学ぶ4大分野の業務知識」などの業務知識系、「実践!プロジェクト管理入門」シリーズ、「統合型プロジェクト管理のススメ」などのプロジェクト管理系、最近ではThink ITの連載をまとめた「これからのSIerの話をしよう」「エンジニアなら知っておきたいAIのキホン」「エンジニアなら知っておきたい システム設計とドキュメント」を刊行。

「日本のITの近代化」と「日本のITを世界に」の2つのテーマをライフワークに掲げている。

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