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| ミュンヘン市、14,000台をWindowsからLinuxに移行 | ||||||||||||||||
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2003年5月、ドイツ第3の都市ミュンヘン市議会は、市役所の全コンピュータ14,000台をWindowsからLinuxへ移行すると決議しました。このニュースは世界中を驚かせました。なぜなら、サーバだけでなくデスクトップPCをすべてWindowsからLinuxに移行するなどとは、誰も考えもしなかったからです。 ![]() しかし、本当の理由は別の所にありました。それは特定の製品への依存を避け、健全な市場競争を活性化することです。ドイツでも日本と同様にほとんどのパッケージソフトウェアは米国製です。Windowsだけでなく、OracleやPeopleSoftなど基本ソフトウェア(OS)からミドルウェア、アプリケーションまで米国製品が市場を独占していました。 一方、ドイツでは早くからオープンソースソフトウェアが普及しており、開発も盛んです。世界第2のLinuxディストリビュータSUSE Linuxがあり、デスクトップ統合環境KDEの開発本拠地でもあります。また、MS Officeの対抗馬として最有力であるOpenOffice.orgの基になったStarOfficeは元々ドイツの企業が開発したものをSun Microsystemsが買収したものです。 このような背景の下、市場競争によってドイツ製品の購入を促すために、市議会はLinux移行を決議したのです。導入コストで言えば、実はMicrosoftの方が低価格でした。IBMとSUSE Linux連合が提案した価格が3950万ドルであったのに対し、Microsoftは3660万ドルでした。それにも関わらずLinuxの提案が通ったため、Microsoftの副社長がミュンヘン市を訪れ、さらに2370万ドルへの大幅値引きを提示したと伝えられています。しかし、ミュンヘン市は独占を続けるための不当行為だとして受け入れませんでした。 |
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| Linux移行の壁 | ||||||||||||||||
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その後1年間の検討期間を経て、2004年6月には正式にLinux移行計画LiMuxが承認されました。しかし、Linux移行は簡単ではありません。業務システムをWebベースに移行するとは言え、それまで300ものクライアントソフトが使われていました。これらをすべてLinuxやWebベースに移行するのは大変です。また、市役所で使われているMS Office文書はOpenOffice.orgと完全な互換性はなく、特にマクロが多数使われていることが分かりました。それに加え、Linux環境に慣れてもらうため職員を再教育しなければなりません。 検討の結果、5年間をかけて徐々に移行することになりました。業務システムは可能な限りWebベースに置き換え、Linux上のブラウザで利用できるようにします。当初は、VMWareなどのエミュレーションソフトを使って、WindowsアプリケーションをLinux上で使うことも認めます。ただし、コスト高になりますので、最終的にはLinuxアプリケーションに切り替えることが原則です。 |
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| ソフトウェア特許問題による停止・再開 | ||||||||||||||||
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Linux移行計画がスタートしてしばらく後、2004年8月、ミュンヘン市は突然計画の停止を発表しました。理由は、特許問題への懸念です。欧州ではソフトウェア特許が認められていませんでしたが、米国の圧力によりソフトウェア特許法案が提案され審議されています。これが成立した場合、Linuxをはじめとするオープンソースソフトウェアに特許問題が発生する可能性があり、その法的リスクと財務的リスクを検討するため、というのが理由でした。 幸いなことに、1ヶ月もしない内に、リスクは許容範囲であるとして、計画は再開されました。2005年初頭に一部の部署からLinux移行が始まるとのことです。 |
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ミュンヘン市の事例のポイントは、特定製品への依存を回避し、市場競争の下で調達を行うためにオープンソースを採用したことでした。短期的にはコストもかかり、職員の再教育も必要となります。しかし、長期的にはコスト削減が可能であり、地元企業の活性化にもつながると考えています。 |
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検討の結果、5年間をかけて徐々に移行することになりました。業務システムは可能な限りWebベースに置き換え、Linux上のブラウザで利用できるようにします。当初は、VMWareなどのエミュレーションソフトを使って、WindowsアプリケーションをLinux上で使うことも認めます。ただし、コスト高になりますので、最終的にはLinuxアプリケーションに切り替えることが原則です。