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リッチクライアントの現状と今後の動向
リッチクライアントの現状と今後の動向

第1回:リッチクライアントとは
著者:野村総合研究所  田中 達雄   2005/3/7
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リッチクライアントが注目される背景

   2003年頃からIT関連の各種メディアで、リッチクライアントという言葉が頻繁に使われるようになった。その間、多くのベンダーから"リッチクライアント製品"なるものが提供され、徐々に導入事例も報告され始めている。

   このように注目され始めたリッチクライアントであるが、その背景にはWebアプリケーションの普及とWebブラウザベースのクライアント環境の問題が挙げられる。詳細は後述するがインターネットの時代に入り、クライアント/サーバ型のシステムと比較した場合の開発コストや保守容易性の利点からWebブラウザとWebアプリケーションサーバで構成されるWebアプリケーションシステムへの移行が進んだ。

   しかし、Webブラウザベースのクライアントは、クランアント/サーバ型のクライアントと比較した場合、必ずしも利用者にとって使いやすいものではなかった。極端に言えば、利用者の操作性/利便性を犠牲にした上でWebアプリケーションを普及させてきたとも言える。これは利用者の生産性の低下を招き、多くのアプリケーションがWeb化される現在、無視できない問題として顕在化してきた。

   これに対し、リッチクライアントはWebアプリケーションシステムであるにも関わらず、利用者の操作性/利便性を犠牲にしないクライアント(あるいは技術)であり、このことがリッチクライアントを注目させる理由となっている。


リッチクライアントの定義

   昨年より筆者自身、多くのメディアで講演や執筆活動を通してリッチクライアントに関わってきたが、登場して間もない頃は、リッチクライアントの概念すらまだ広く世間に認知されていなかった。リッチクライアントと聞いて、"従来型のクライアント/サーバ・システム"のクライアント(本連載では「ファットクライアント」と呼ぶ)をイメージする方も多くいた。

   しかし、リッチクライアントという言葉が頻繁に使われ始めて約2年が経過した今では、ある程度その言葉の意味は理解され始め、ファットクライアントをイメージする方は少なくなっていると思う。しかし、リッチクライアントの正確な定義という点では、ベンダーによってその定義が多少異なっていたり、実現する技術も様々であったりすることから、わかりづらい状況にある。

   そこで本連載では、リッチクライアントへの認識を統一するために、リッチクライアントとは表1の特徴を備えた「Webアプリケーションのクライアント(あるいは技術)」と定義する。以降、表1の定義を念頭において読み進めてほしい。

  • 高い表現力を備える
  • 高い操作性を容易に実現できる
  • 容易に配布することができる
  • クライアントリソースを有効活用できる(例えば、クライアントにプログラムやデータを保存したり、オフラインでのある程度の処理を実行することができたりするなど)

表1:リッチクライアントの定義



過去のクライアント技術の問題点

   ここでは、先に述べたリッチクライアントが注目される背景を十分に理解してもらうために、これまでのクライアント技術の歴史を振り返ることにする。これまでのクライアント技術の変遷は図1のようになる。図1に示すとおり、クライアント技術は大きく4つの世代に分けることができる。それぞれの世代の技術は、前の世代の技術の欠点を解消する形で登場、または進化している。その繰り返しの結果、現在のリッチクライアントに辿り着いたといえる。ではこれまでのクライアント技術には、どういった特徴があり、どういった欠点があったのかを順番に解説する。

リッチクライアントの位置づけ

図1:リッチクライアントの位置づけ



メインフレームの時代

   この時代のクライアントマシンはCPUやメモリといったリソースが乏しく、処理はすべてメインフレーム上で行われていた。クライアント側ではデータの入出力しか行えなかった。

   メインフレームのクライアントでは、基本的に文字列しか画面に表示できずにいた。しかも表示できる文字数も少なく制限があった。また、各機能はキーボードに割り当てられていたため、操作が直感的にはわからず、キーボードと機能の対応関係の教育を十分に受けていないと、そのアプリケーションを操作することはできなかった。つまり、メインフレーム時代のクライアントは、表2のような制約や欠点を抱えていたことになる。

  • クライアントリソースが乏しく、入出力にしか使えない
  • 表現力が乏しい
  • 操作性も低い

表2:メインフレーム時代の制約


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野村総合研究所
著者プロフィール
株式会社野村総合研究所  田中 達雄
1989年4月に富士通株式会社に入社。ソフトウェア工学を専門分野とし「UMLによるオブジェクト指向開発実践ガイド(技術評論社出版)」を共著。2001年2月に野村総合研究所に入社。現在、情報技術本部にてIT動向の調査と分析を行うITアナリスト集団に所属。Webサービス/BPMなどの統合技術、エンタープライズ・アーキテクチャなどが専門。


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INDEX
第1回:リッチクライアントとは
リッチクライアントが注目される背景
  クライアント/サーバ・システムの時代
  Webアプリケーションの時代
  リッチクライアントは何を解決するのか
リッチクライアントの現状と今後の動向
第1回 リッチクライアントとは
第2回 リッチクライアントの市場調査結果
第3回 リッチクライアントの適用事例
第4回 リッチクライアント製品/技術動向
第5回 リッチクライアントの将来
関連記事 : Biz/Browserで経営の効率化を実現する
第1回 リッチクライアントとBiz/Browser
第2回 Biz/Browserの運用事例
第3回 「Biz/Browser」の機能紹介
第4回 「Biz/Browser」の機能による生産性の向上
第5回 「Biz/Browser」の「昨日」「今日」「明日」
関連記事 : リッチクライアントCurlの特徴と導入実態
第1回 リッチクライアントの発展とCurl
第2回 ドキュメントを活用したCurlアプリケーションの開発
第3回 Curlアプリケーションの公開
第4回 Curlの適用事例(前編)
第5回 Curlの適用事例(後編)
関連記事 : IdbAで構築する生産性が高いリッチクライアント
第1回 Rimless Computingとは?
第2回 リッチクライアントとIdbA
第3回 コンポーネントの開発事例
第4回 これからのリッチクライアント
第5回 開発生産性を向上するIdbA R2.0と、その方向性
Eclipseで実現するリッチクライアントの世界
第1回 他とは異なるEclipse RCPの特徴
第2回 アプリケーションを実際に作ってみる(前編)
第3回 アプリケーションを実際に作ってみる(後編)
第4回 アプリケーションの配布