市場からみるHAクラスタソフトウェアの採用動向 (3/3)

クラスタ市場
HAクラスタソフトウェアの市場動向

市場からみるHAクラスタソフトウェアの採用動向
著者:IDC Japan  田中 久美   2005/12/20
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Linuxが数量ベースでWindowsやSolarisを上回る

   次に、主要プラットフォームごとに「クラスタ接続されるノード数」をみていくと興味深い結果が得られたので、ここで紹介したい(図3)。クラスタ接続されるノード数とは、例えば標準的な2台の物理サーバによるフェイルオーバーシステムの場合、2ノードと数えている。

   ここではSolaris/Windows/Linuxの3種のOSで比較した。SolarisとWindowsが接続ノード数において前年割れとなっているにもかかわらず、Linuxは2002年からリニアに接続ノード数を伸ばし、2004年はWindowsやSolarisを数量ベースで上回ったとIDCではみている。
HAクラスタリングソフトウェアの接続ノード数
図3:HAクラスタリングソフトウェアの接続ノード数
出典:IDC Japan(2005年)

   これはLinuxによる高可用システムが、他のどのプラットフォームよりも急速にユーザに受け入れられていることをあらわしている。

   Solarisは数量ベースでは苦戦しているが、金額ベースではマシンクラスのハイエンド化によってプラス成長が続いている。ローエンドシステムの分野において、SolarisがLinuxに置き換えられても、依然としてハイエンドシステムでは顧客の支持を保ちつづけている。

   WindowsについてはOSのリリーススケジュールに左右される面が強いので、2004年には大きな動きはみられなかった。なお、2002年は約15,000ノードにもおよぶ大手コンビニエンスストア向けシステムの大口案件があったため、ノード数が突出している。


高可用ニーズが高まっているLinux

   次にプラットフォーム別のHAシステム化率について議論する。HAシステム化率とは、サーバ新規出荷台数と新規クラスタソフトウェア出荷におけるクラスタ接続ノード数を比較して算出したものである。HAシステム化率は、どれだけミッションクリティカルなシステムに適用されているかの1つの大きな判断基準となるものである。

HAシステム化率
図4:HAシステム化率

   最もHAシステム化率が高いのはSolarisであり、2004年は14.2%であった。SolarisのHAシステム化率の高いということは、WindowsやLinuxと比較してSolarisではよりシステムダウンが許されないアプリケーションでの利用率が高いことを意味している。Solaris版の多くは、Oracleの大規模データベースシステムの高可用性を支えるコンポーネントとして稼働しているケースが多い。

   LinuxのHAシステム化率は8.0%であり、UNIXやWindowsのHAシステム化率が横ばい傾向のなかでLinuxだけが着実に高可用システムとしてのニーズが高まっていることが証明された。なおWindowsのHAシステム化率は、Windowsサーバの出荷量自体が多いので、低い結果となっている。

   これらのいくつか得られたデータから、Solarisはシステムダウンの許されないミッションクリティカルシステムで依然として顧客の支持を保ちつづけているが、しかしその中でもHAシステム構成によって置き換えられる部分は、Linuxにシフトしているという事実を読み取ることができる。

   LinuxはUNIXから派生した経緯から信頼性や安定性、セキュリティの面でUNIXに遜色ないといえよう。またさらにソフトウェア費用が安価に済むというアドバンテージから、LinuxがUNIXとWindowsの溝を埋めるミッドレンジOSとして、広く定着しはじめているのである。

   一方、WindowsのHAシステム化率は2004年で1.1%と低い水準にある。2002年は6.2%と急激に高まっているようにみえるが、これは先ほど述べたように、マイクロソフトのMSCSを使った約15,000ノードの2ノードHAシステムが特定の会社に販売されたという一時的な現象によるものである。この大口案件を除けば、2002年のWindowsのHAシステム化率は1.3%であったとIDCではみている。

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IDC Japan株式会社  田中 久美
著者プロフィール
IDC Japan株式会社  田中 久美
ソフトウェア マーケットアナリスト
IDC Japanのソフトウェア担当マーケットアナリストとして、年間情報提供サービス「Japan Software Infrastructure and Tools」のほか、半期ごとの市場動向調査、市場分析およびカスタム調査分析を担当。対象分野に、サーバーバーチャライゼーションソフトウェア、HAクラスタリングソフトウェアなどがある。
IDCに入社以前は、国内の調査会社において3年以上、サーバー、ソフトウェア、サービスなど幅広いマーケットリサーチを担当。
青山学院大学 国際政治経済学部 国際経営学科卒業。


INDEX
市場からみるHAクラスタソフトウェアの採用動向
  HAクラスタソフトウェアについて
  2004年国内市場規模
Linuxが数量ベースでWindowsやSolarisを上回る
徹底比較!!クラスタソフトウェア
第1回 クラスタソフトウェアの導入にあたって
第2回 日本が生んだ、ビジネスを守る信頼のブランド「CLUSTERPRO」
第3回 GUI操作だけでHAクラスタが構成できる「LifeKeeper」
第4回 企業情報システムとともに進化するClusterPerfectシリーズ
第5回 富士通の高信頼基盤ソフトウェア「PRIMECLUSTER」
第6回 Serviceguard for Linuxで実現するHAクラスタ
第7回 Red Hat Cluster Suiteの紹介
第8回 Windows Serverにおけるクラスタソフトウェアの進化
第9回 オープンソースソフトウェアの「Heartbeat」によるHAクラスタ
第10回 クラスタソフトウェア導入に際しての注意点
LifeKeeperのすべて
第1回 HAクラスタの基本とLifeKeeper
第2回 LifeKeeper for Linuxのインストール
第3回 LifeKeeper for Linuxの操作
第4回 LifeKeeper for Windowsのインストール
第5回 LifeKeeper for Windowsの操作(前編)
第6回 LifeKeeper for Windowsの操作(後編)
第7回 共有ファイルシステム「LKDR」と「DRBD ARK」
第8回 MySQL/OracleとLifeKeeperによるHAクラスタ化
第9回 LifeKeeperのコマンドライン操作
第10回 Microsoft SQL ServerとLifeKeeperによるHAクラスタ化
第11回 LifeKeeper Data Replication For WindowsとDisk-to-Disk Backup
第12回 様々なアプリケーションのHAクラスタ化を実現するGeneric ARK
第13回 ハードウェア冗長化
第14回 LifeKeeperの管理 - ログの確認方法とSNMPの設定
第15回 LifeKeeperの今後のロードマップと展望

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