第1回:なぜ今、BI統合化なのか (3/4)

統合化BI
統合化が進むBIツール

第1回:なぜ今、BI統合化なのか
著者:アイエイエフコンサルティング  平井 明夫   2006/03/06
前のページ  1  2  3   4  次のページ
BIツールの拡張がもたらした問題点

   すべてのユーザ層に利用可能なBIツールを目指して、BIベンダーが行った製品ラインの拡張は、企業内での社員数に対するBIツール利用者数の増加につながりました。しかしその結果、別の問題点もでてきています。

   ここに興味深い調査レポートがあります。それは、TDWI(The Data Warehousing Institute)が2005年7月に発表した「Enterprise Business Intelligence: Strategies and Technologies for Deploying BI on an Enterprise Scale」というタイトルのものです。このレポートは、TDWI(注)からダウンロード可能となっていますので、興味のあるかたは原文もご覧ください。

※注:
TDWI
http://www.tdwi.org

   このレポートは、世界中の594の企業を対象にして行ったBIツールの導入状況に関する調査結果で以下のような結果が報告されています。

  1. 企業内での社員数に対するBIツール利用者数の割合は、平均するとここ3年間で40%から60%に増加した
  2. 現在、1社あたり3つないし4つのBIベンダーのBIツールを導入しており、同一ベンダーの製品であってもすべてを別個に数えると、1社あたり平均14種類のBIツールを導入している

表1:BIツールの導入状況

   この調査結果は、BIツールの拡張がBIツール利用者の増加、つまりすべてのユーザ層で必要とされるデータ活用基盤の整備が進む一方で、ユーザ層や部門ごとのニーズにあわせて、別個にBIシステムを導入してきた結果、あまりにも多くの種類のBIツールが使用されている状況になっていることを示しています。

   またこのレポートでは、BIツールだけではなく、データウェアハウスやデータマートの構築状況についても調査が行われており、そちらでも部門別や分析ニーズ別にデータベースが構築されてしまっており問題視されていると報告されています。

   このような調査結果から、現在の企業がBI導入状況について問題と考えている項目は、やはりTCOとITガバナンスの2つの観点でまとめることができます。


TCOの観点からの問題点

   多種多様なBIツールの利用は、システムの更新・保守に関するコストを全般的に増大させます。

   単純に考えても、影響を与えるコスト項目として以下のようなものが考えられます。

  1. ソフトウェア保守サービスとバージョンアップライセンス費用
  2. システムやアプリケーションを変更・拡張する際の開発費用
  3. IT部門が、BIツールに習熟するための工数と費用
  4. IT部門が、BIツールの運用を行うための工数と費用
  5. ユーザ部門が、BIツールに習熟するための工数と費用

表2:BIツールとコスト費用

   これらのコストを積み上げていくと、企業にとって無視できない負担が発生している可能性が極めて高いといえます。

   ところがこのTCO観点からの問題点は、主に予算と要員の確保という対処も可能であり、比較的単純な問題であるともいえます。


ITガバナンスの観点からの問題点

   一方、部門ごとのBI導入と多種多様なBIツールの利用は、ITガバナンスの観点からも様々な問題点を発生させます。例えば、表3のようなことが考えられますが、これらはTCO観点の問題よりも一層複雑であるといえます。

  • ソフトウェアによる違いやデータの分散によりデータの不整合が発生する
  • IT投資における予算編成・執行上の計画性が証明できない
  • ユーザ管理やクセス制御が複雑で、情報セキュリティが確保できない
  • データやアプリケーションに対するアクセスや変更を集中的に監査できない

表3:多様性による問題点

   また、現在はSOX法への対応といった外部要因も含めて、企業のITガバナンスへの注目度は非常に高くなっているため、これらITガバナンスの観点からの問題点は、より緊急度の高いものとして捉えられています。

前のページ  1  2  3   4  次のページ


アイエイエフコンサルティング
著者プロフィール
株式会社アイエイエフコンサルティング  平井 明夫
日本DEC(現HP)、コグノス、日本オラクルを経て現職。一貫してソフトウエア製品の開発、マーケティング、導入コンサルティングを歴任。特に、データウエアハウス、BI、OLAPを得意分野とする。現職についてから、BIスペシャリストの人口が増えない現状に発奮し、BI技術の啓蒙のため、雑誌・Web媒体の記事執筆に積極的に取り組んでいる


INDEX
第1回:なぜ今、BI統合化なのか
  BIツール統合化の背景
  BIツールの発展(全てのユーザのためのBI)
BIツールの拡張がもたらした問題点
  企業内BIツール標準化への流れ
統合化が進むBIツール
第1回 なぜ今、BI統合化なのか
第2回 データを中心に統合化するOracle
第3回 オープンアーキテクチャを採用した「Cognos 8 BI」
第4回 ビジネス・パフォーマンス・マネジメントが実現する経営管理サイクル
第5回 End To Endの包括的なBI・EPMを提供するBusinessObjects XI
第6回 統合マネジメントシステムを実現するBIプラットフォーム
第7回 統合化のメリットと各社の特徴
関連記事 : システム企画担当者のためのBIシステム導入の勘所
第1回 BIの世界を体験する−イントロダクション  オープンソースBIツールOpenOLAP
第2回 BIシステムの特性を知る−基礎知識編(1) BIシステム導入の目的
第3回 BIシステムの特性を知る−基礎知識編(2) BIシステムのアーキテクチャ
第4回 BIシステムの特性を知る−基礎知識編(3) データベースとBIツール
第5回 BIシステムの特性を知る−基礎知識編(4) BI構築プロジェクトの進め方
第6回 BIシステムをつくってみる−実践編(1)設計−導入計画と要件定義
第7回 BIシステムをつくってみる−実践編(2)設計と構築
第8回 BIシステムをつくってみる−実践編(3)続・構築フェーズ
第9回 BIシステムをつくってみる−実践編(4)構築フェーズ〜プロジェクト評価フェーズ
第10回 BIシステムをつくってみる−実践編(5)機能拡張プロジェクト
第11回 BIシステムの構成を決める−製品選択編(1)BIツール選択のポイント
第12回 BIシステムの構成を決める〜製品選択編(2)BIツール選択(続き)とデータベース選択のポイント
関連記事 : BIツール選択に失敗しないために
第1回 BIツール選択の基本は、分類すること
第2回 分析ツールの選択〜パワーユーザに必要な機能をチェック(前半)
第3回 分析ツールの選択〜パワーユーザに必要な機能をチェック(後編)
第4回 レポーティング・ツールの選択〜大量ユーザのサポートに必要な機能をチェック(前半)
第5回 レポーティング・ツールの選択〜大量ユーザのサポートに必要な機能をチェック(後半)
第6回 モニタリング・ツールの選択〜経営者が必要とする表現力をチェック(前半)
第7回 モニタリング・ツールの選択〜経営者の必要とする表現力をチェック(後半)

人気記事トップ10

人気記事ランキングをもっと見る